HSP×INFJのレーダーを、少しだけ自分にも向けてみた
「次に何が来るかがわかる 」。 それが私の誇りだった。 患者さんのバイタルがわずかにブレた瞬間、スタッフの顔色が曇る前に異変を察知する瞬間、病室に入る前から 「…
「次に何が来るかがわかる 」。
それが私の誇りだった。
患者さんのバイタルがわずかにブレた瞬間、スタッフの顔色が曇る前に異変を察知する瞬間、病室に入る前から 「今日はいつもと違う」 と感じる瞬間。
他のスタッフがまだ気づいていない段階で、私はもう体が動いている。
たとえるなら、全方向に向けたレーダーが常時稼働している状態だ。
360度、絶えず電波を受信し続ける。それが私の働き方だった。
シミュレーションが速いから、行動への変換も速い。
「あの人はいつも先を読んでいる」 と言われるたびに、それが誇りだと思っていた。
でも最近、ある言葉が頭にこびりついて離れない。
「ナースコールには0秒で動けるのに、自分の限界サインは何ヶ月も無視していた」
これは、過去の自分の話だ。
26年間、私は「人の感情」をケアして、「自分の感情」を後回しにしてきた

夜勤が続いていたある時期、体に静かな異変が起きていた。眠れない。疲れているのに、眠れない。寝ついても何度も目が覚める。
それでも翌日は現場に出て、誰かが気づく前に先手を打って動く。
「疲れているだけだ」 と処理して、見なかった。
あのレーダーに、受信はできても送信する機能がついていなかった。
電波は入り続けるのに、出ていかない。気づいたときにはバッテリーが底をついていた。
もっと後になって現れたのは、無意識のイライラだった。
別に怒るような出来事ではないのに、体の奥に火種が燃えている感覚。
一番しんどかったのが 「自分のことを悪く言われているんじゃないか」 という根拠のない感覚だ。
誰かが廊下で話しているだけで、なぜか自分が対象のような気がしてしまう。
今ならわかる。あれは、神経が消耗しきっていたサインだった。

師長から 「あなたしか頼める人がいなくて」 と言われるたびに断れなかった。正確には、断りたくなかった。
「選ばれた」という感覚が、疲れよりも大きかったから。
組織にとってはコスパのいい「安全保障」で、私にとっては「役に立てている証明」だった。
「役に立てる」と「使われている」の境界線が、いつの間にか消えていた。
HSPとINFJは違う。でも、重なっているから余計につらい
私がHSPとINFJという言葉を初めて知ったのは、47歳のときだ。「自分はこういう特性だったのか」と、パズルがはまっていくような感覚があった。
26年間ずっと抱えてきた「なぜ自分はこんなに疲れるのか」「なぜ人の感情がこんなに入ってくるのか」という問いに、初めて名前がついた。
HSPは神経系の感受性の高さを指す概念で、人口の15〜20%に見られる。INFJはMBTIの認知様式で、人口の1〜3%という希少な類型だ。この二つはイコールではない。まったく別の軸の話だ。
でも、INFJの私は、確かに「感じ取りすぎる」。
頭の中では常に複数のシミュレーションが同時に走っている。ブラウザで言えば、タブが常に20枚以上開いている状態だ。
「こう言ったらこう返ってくる」「この人は今、何を求めているか」「この場の空気が崩れる前に何をすべきか」。それぞれのタブが勝手に更新し続ける。
救急の現場では、それが 「生存戦略」 として機能した。
先回りして動けること。空気を読んで最適な判断を下せること。あの14年間は、その能力がフル稼働していた時期だった。
だがその能力は同時に、自分をオーバーヒートさせる燃料でもあった。
HSP的な神経過敏とINFJ的なシミュレーション過多が重なった人間が、感受性の消耗を求められる医療現場に26年いたとすれば。
それがどれほどの負荷だったか、47歳を過ぎてようやくわかった。
「感じすぎる自分」を否定しなくていい、と気づいた日

47歳でHSPとを知り、その後NFJを知ったとき、私が一番思ったのは「もっと早く知りたかった」ではなかった。
「ああ、だからか」だった。
救急救命センターで先回りして動けたのも、患者さんの微細な変化に気づけたのも、崩壊しかけた組織の中で情報を拾い続けられたのも、全部この気質があったからだ。
それは誇りでいい。
ただ、一つだけ変えようと思っていることがある。
「感じ取った後に、自分が最初に使う」ということだ。
レーダーを内側にも向ける。患者さんの変化に気づいたとき、チームに伝える前に一秒だけ 「今の自分の状態はどうか」 を確認する。
眠れているか。何かを無意識に抑えていないか。根拠のない不安が出てきていないか。
感じすぎる自分を消そうとする必要はない。そのアンテナを、外だけでなく、内側にも向ける。それだけでいい。
26年かけて気づいた、たったそれだけのことが、今は一番大事なことだと思っている。
あなたはどうですか。
「感じ取れてしまう」という自分の気質を、今の職場で消耗品として使い続けていませんか。
